季刊誌「ハーネス通信」
2024年07月のバックナンバー
- 盲導犬ユーザーの職場訪問(4) みんなまるっとしあわせ(2024年夏号)
今回は、「SNSフォロワーが2万人以上いる治療院」の院長、そして盲導犬フーゴのユーザーでもあるとも先生の治療院「とも鍼灸マッサージ治療院(奈良県生駒市)」を訪問しました。とも院長さんは、どんな院長さんなのでしょう?
元気に出迎えてくださったのは、とも鍼灸マッサージ治療院の院長さんと盲導犬フーゴ、そしてスタッフのみなさん。この治療院は院長さん以外にも複数の施術スタッフさんがおられて、訪問治療もされているとのこと。明るい院内はポスターや手作りオブジェなども飾られていて、若々しく楽しい雰囲気です。
とも先生に質問しました。
Q:活気があって忙しそうですね。
A:フーゴくんが看板犬になってくれて、フーゴくんに会うために遠くからいらっしゃる人もいます。また大阪勤務の人が多い土地柄なので、近所のサラリーマンの人たちが仕事帰りに寄ってくださったり、土曜日など仕事が休みの日に来てくださる人も多いですね。
Q:盲導犬フーゴを紹介してください。
A:僕にとって2頭目の盲導犬の男の子、5歳です。とにかく人懐こくて、ベタベタします。僕の癒しです。うちのお店は、ペットのわんちゃんを連れてくるお客さんもいて、そんなときはフーゴくんもワチャワチャになります。でもちゃんと切り替えて、落ち着くことができるから問題ないです。フーゴくんは僕より10倍くらい真面目なんですよ。
Q:盲導犬を持とうとしたきっかけは?
A:僕、子どもの頃は見えていて、クイールの本や映画が好きだったんです。小学校高学年頃にかなり見えにくくなって盲学校に相談に行ったとき、そこに盲導犬がいたんです。かわいいなぁって思ったのが最初の出会いでした。そして、「盲導犬を持って目立ちたい! もてたい!」と思って申し込みました(笑)
Q:盲導犬のおかげで、もててますか?
A:もてもてですよ~! 老若男女、わんちゃんきっかけで寄ってきてくれる人たちは、みんな本当に優しいんです。電車でも、飲み屋でも、人の温かさをたくさん感じます。フーゴくんの存在はプラスにしかならないですね。
Q:治療院を立ち上げたきっかけは?
A:はじめは勤めていたんですが、仕事に打ち込むほど盲導犬と一緒にいる時間が短くなり、自由がなくなってきて。「だめだ、自分の店を持たなくては」と思いました。今はフーゴくんと通勤し、職場でも一緒に過ごせるという理想的な生活スタイルです。
Q:SNSのインスタグラム、すごい人気ですね! だれが運営しているのですか?
A:僕が文章を書き、アップしています。スタッフのみんなや、サポートしてくれる人たちにすごく恵まれていて、チームで考えたりアイデアを出し合ったりしています。
Q:いつはじめたのですか?
A:コロナ禍の頃です。スタッフさんと「盲導犬で電車に乗るところを撮ろうよ」ということになり、その動画をアップしたのが一発目でした。そのうちバズって、賛否両論のコメントが集まって炎上することもありました。
Q:SNS発信するようになって何か変わりましたか?
A:僕の仕事に対するスタンスは何も変わりません。でもSNSがきっかけで来てくれる人がいるのはうれしいですね。関東から旅行がてら来てくれる人もいますよ。うちで施術を受けて、フーゴくん触って、写真撮って、そして僕のおすすめの飲み屋さんに行くというスペシャルコースで、みんなまるっと幸せ!
Q:SNSはお客さんを増やすツールなんですね。
A:いえ、僕にとっては盲導犬の啓発活動でもあるんです。入店拒否に遭ったあとに話し合いで理解を得て、改めてそのお店に入店する動画をアップしたらバズりました。中には否定的な意見もありますけれど、知る人が増えて考えてもらうきっかけになるのがねらいでもあります。
Q:SNSで否定的なコメントがあると落ち込みませんか?
A:僕も勝手にアップしているし、向こうも勝手にコメントしてるだけ。そう考えてポジティブにとらえています。だから大丈夫。僕は楽しく自由に生きてますよ。
Q:仕事で心がけていることはありますか?
A:お客さんには体も心もリラックスしてほしいし、痛みをとって帰ってほしい。だから一回一回が勝負、緊張感をもって毎回ベストを尽くしています。そのためには日頃の勉強も大切だと思うんですよね。だからできるだけ研究会などに出て、自分を高めるようにしています。最近はよく自宅でZoom参加しています。夜でも参加できるので便利です。
Q:どんな勉強をしているのですか?
A:最近興味があるのは、科学や心理学、漢方や東洋医学。専門外でも自分を耕しておくことは、お客さんと接する中で必ず役立ちますから。それに共通の話題が見つかって、理解を深めることもできます。
Q:趣味や好きなこと、楽しみはなんですか?
A:趣味はお酒! 毎晩のように飲み屋に行くのが楽しみです。好きなのは、わんちゃん! ラブちゃん大好き。夢はラブの赤ちゃんを抱っこすることです。楽しみは旅行ですね。仲間とあっちこっち旅行にいって、工夫してSNSにアップするのも楽しい。旅行の話題って誰も傷つけないでしょ。だからたくさん旅をして、話題を豊富にしたいですね。
テンポよい会話に惹き込まれるうちに、気が付くと立場が逆転し、こちらがインタビューされていることもしばしば。「相手を肯定し、興味を持って聴く」という篠原さん流の癒しの話術に気持ちよく乗せられました。
すぐに冗談で脱線するインタビューでしたが、最後に語ってくださった「しんどい時に行きたくなる治療院を目指しています」という真剣なまなざしが印象的でした。
今回は人気治療院の秘密をたっぷり聴かせてもらいました。これからも「とも鍼灸マッサージ治療院」の楽しいインスタグラム、楽しみにしています。みなさんもぜひご覧ください。
※とも鍼灸マッサージ治療院のインスタグラムhttps://www.instagram.com/tomo_hari_kyu_ikoma/
(取材・文:Etsuko F.)