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季刊誌「ハーネス通信」

2023年10月のバックナンバー

ボランティアリレーエッセイ(1) パピーウォーカーはやめられない(2023年秋号)
 「育てた子犬を訓練センターに返す時、寂しくないの?」  犬の散歩で知り合った人たちによく聞かれます。もちろん、寂しいです。初めて育てた子犬のパピーウォーキング修了式には嗚咽するほど泣いて、家族にあきれられたほどでした。 HP用.jpg
 委託の時に4~5㎏だった子(たまに7~9㎏の大きな子もいますが)が、修了式を迎えるころには30㎏近くになっています。名前を呼んでもキョトンとした顔だった子が、尻尾フリフリでそばまで来てくれ、「Good」を理解して行動するようになっていきます。部屋のいたるところでワンツー(おしっこ、うんち)をしていたのが決まった場所でするようになります。  膝にあごを乗せて甘えてきたり、おもちゃをくわえて遊びに誘ったり、前足でチョンチョンとして抱っこをせがんだり、可愛い仕草で和ませてくれます。散歩もトコトコチョロチョロと歩いていたのに、いつの間にか軽快に、時には引っ張るほど力強く歩くようになります。パピーの可愛さに癒され、いたずらに悩まされ、楽しく笑いの絶えない毎日を送っている間に1年は過ぎていきます。  協会では【パピーウォーカーとは、将来盲導犬になるための子犬を人間との信頼関係と社会性を身につけさせるために、節度ある愛情をもって養育するボランティア】と定義されています。そのことをふと思うと、"私はその趣旨に見合った育て方をしているかな? これで大丈夫なのかな?" と不安や心配なことが頭をもたげてきます。  でもそんな私には、巡回やパピースクールで相談できる協会の職員さんがいます。悩みを聞いて励ましてくれる先輩パピーウォーカーさんがいます。「そうよ、みんな同じよ」と共感してもらえる仲間がいます。  私がパピーウォーカーを続けているのは、不安や心配、別れの寂しさに勝る、パピーとの楽しく癒される日々を過ごせるからだと思います。だから私は今年もまた可愛いパピーを迎え、悩んで楽しんで1年を過ごしています。
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