ハーネスをつけた訓練だけじゃない 盲導犬の訓練
これまで昨年1年間を通して、ハーネスをつけて行う誘導訓練の内容についてお伝えしてきました。今回は、誘導訓練の他に当協会で行っている、木香テラステラスでの生活訓練や基本訓練についてご紹介しましょう。
【生活訓練】
パピーウォーキングを修了し、木香テラスに戻ってきた犬たちの生活習慣に関わる訓練です。
テラスでの過ごし方
ステップ1 パピーウォーカーのおうちでは、寝る時などにケージを使用しています。そこで、テラスに戻ったばかりの頃は、パピーウォーキング中に近い生活からスタートするようにケージを使用します。
周りの様子が気になって落ち着けない場合は、ケージにカバーをかけることもあります。
ステップ2 犬室では、クッションやハンモックなど、その犬に合わせて使い分けます。
ステップ3 訓練が進むと、「待つ」練習のために、日中、犬室から出て過ごす時間も取ります。
排泄
ステップ1 木香テラスに戻ってきたばかりの頃は、パピーウォーキング中と同じようにトイレシートを使ったり、その犬が排泄しやすい場所を選ぶなど、排泄しやすい環境を作ります。職員の声かけでスムーズに排泄が出来るように促していきます。
ステップ2 ワンツーベルトをつけて排泄する練習をします。
ステップ3 ワンツーベルトをつけ、いろいろな場所で排泄ができるようにします。
ブラッシング
ブラッシング中に、ウロウロ、バタバタしてしまう犬もいます。声かけやブラッシングの方法など、その犬に合わせたやり方で、落ち着いてブラッシングされることを受け入れていけるようにします。
歯みがき
歯みがきを嫌がらないよう、犬の好きな味の犬用歯みがきペーストを使用しています。歯みがきをイヤがる場合は、まずその原因を取り除くようにします。無理に犬の口をつかんだりせず、犬が自分から来ることを待つようにします。
【基本訓練】
人に意識を向け、人とのコミュニケーションを深めるために行う訓練です。
シット すわる
おもちゃで遊んでいる時、おもちゃを上に持ち上げると、犬の視線が上を向き、座りやすくなります。
ダウン ふせる
おもちゃを下におろすと、おもちゃを見つめている犬は伏せる姿勢になります。
ヒール 人の左側について歩く
人の左側にいるときによくほめます。人が早く歩いてもゆっくり歩いても、人のスピードに合わせて左側について歩きます。
ウェイト 待つ
最初は、数秒でも待てたらほめます。待っていることを確認するためリードを軽く引きます。
カム 呼ばれたら人の左側につく
待たせた後「カム」の声かけで訓練士に駆けよる訓練犬。人のそばまで来たら、左側につきます。
【訓練士に聞いてみた】 「基本訓練で大事なポイントは?」
まず基本訓練は、"楽しく遊ぶ"ことから始めます。「人と関わることは楽しい」「やったらほめてもらえる」と犬に理解させていくことがポイントです。
ですから訓練で最初に教えることは、「グッド(よくできたね)!」です。何か行動をしたらほめてもらえた、楽しかったという経験の積み重ねが、犬に自信をつけさせ、自発的な行動を促し、集中力や持続力を養うことにもなるのです。
基本訓練は、ともすれば「シット(座ること)」「ウェイト(待つこと)」などを教えるための訓練のように思われがちですが、それがこの訓練の本来の目的ではないのです。
段差発見や障害物回避などハーネスをつけた誘導訓練でも、「グッド」と声をかけ、犬をよくほめます。訓練を修了し盲導犬となってからも、ユーザーは犬をほめながら歩いています。このような人からの働きかけによって、犬たちは正しい行動を取り、それが「安全な歩行」につながっているのです。
訓練犬たちはパピーウォーキングを修了した後、約1年の間に様々な訓練や経験を通して多くのことを学習し、やがて盲導犬へと成長していきます。
関西盲導犬協会YouTube 記事と合わせて動画でもご覧いただけます
生活訓練・基本訓練の様子を動画にまとめました。
『ハーネス通信連動動画 ハーネスをつけた訓練だけじゃない盲導犬の訓練』
生活訓練編
通常版 https://youtu.be/Rki5Mc0-FZI
副音声版 https://youtu.be/BoqFJDrCgSc
基本訓練編
通常版 https://youtu.be/K77vfUQBjbc
副音声版 https://youtu.be/w80oa3Zs4rg