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季刊誌「ハーネス通信」

2021年11月のバックナンバー

心配するよりやってみよう! スポーツ大好きユーザーが語る"チャレンジする"魅力(2021年秋号)

田川さんゴルフ0901.jpgこの夏は、オリンピック、パラリンピックで盛り上がり、自分も何かスポーツを・・・ と思った方も多いことでしょう。今回は元気いっぱいのスポーツウーマン、田川里香さんに「ブラインドゴルフ」と「タンデム自転車」のことを中心に語っていただきました。


☆ブラインドゴルフとは
 視覚障がい者が晴眼者(パートナー)と二人一組でプレーする。パートナーは、ボールの位置やコースの状況などをプレーヤーに伝える他、ショット前にはプレーヤーのクラブに触れてセッティングを手伝う。

☆タンデム自転車とは
 サドルとペダルが二組ずつあり、二人で前後に並んで乗る自転車。前部に乗り運転する人をパイロット、後部に乗車する人をストーカーという。ハンドル、ギア操作はパイロットが行う。

<ブラインドゴルフ>
一度はあきらめたけれど
 最初にチャレンジした時は、「無理だろう」と人に言われて、あきらめたんです。でもしばらくして、同じ目の病気の人がブラインドゴルフをしていると知り、「それじゃぁ、私にもできるかも?」と始めました。最初は打ちっぱなしで練習する程度で、友だちと会うのが目的でしたが、「うまくなったら、コースまわれるよ」と言われ、実際にコースに出てみたらすごく面白い!! 今は大阪視覚障害ゴルファーズ協会に所属して、月に二度くらいはコースを回って練習するようになりました。ゴルフウェアーを選ぶのも楽しいですよ。

開放感が最高!
 広いゴルフ場で、思いっきり体を動かせるって、すごくリラックスして気持ちいいんです。毎日仕事で疲れても、やっぱり休日はのびのびと体を動かしたいのです。試合に出ることもありますが、試合の成績よりも、今は安定したプレーができるようになりたいですね。そのために同じコースに繰り返し出てコースの感覚を体でつかめるように、こつこつ練習しています。
 
<タンデム自転車>
あきらめていた、あのスピード感
 私の目の病気は進行性なので、見えていたころはバイクに乗っていたんです。ある時、故郷の白浜をバイクで走ったら、景色が走馬灯みたいになってしまって、「ああ、もう私の目がバイクのスピードについていけない」と気づき、それっきりバイクはあきらめました。
 ところがタンデム自転車で初めて峠を降りる時、爽快なスピード感がすごく懐かしくて、「あ、これバイクと一緒!」と思ってうれしくなりました。すっかりタンデム自転車のとりこになりました。

実は一人自転車より楽なタンデム
 タンデム自転車の試合に出場したことはなく、全国各地のイベントに参加しています。イベントは、初心者でも走れるように、休憩を入れながら2時間半とか3時間くらいのコースが多いですね。しんどそうと思うかもしれませんが、パイロットさんがうまくギア調整してくれるし、二人でこぐから力が二倍になって、一人よりずーっと楽なんですよ。しかもその土地の観光スポットがコースになっていて、ガイドさんみたいに楽しく語ってくれるパイロットさんもいて、毎回わくわくします。

<田川さんと盲導犬ルーク>
車から応援する盲導犬?!
 ブラインドゴルフもタンデム自転車も、基本的にルーちゃんと一緒に行きます。行き帰りはしっかり盲導犬のお仕事をしてくれて、私がプレーしている間は、のんびりと寝て待っています。あまり運動が好きじゃないルーちゃんは、長い待ち時間でもストレスに感じないようで、本当に助かります。
 宮崎県のタンデム自転車イベントのとき、ルーちゃんはサポートカーに乗せてもらったんですが、いつのまにか偉そうに助手席に乗ってるんですよ。窓越しに「あ、ママ、がんばってるやん!」みたいな顔をしていて笑いました! もちろん、盲導犬は車の座席に乗ってはいけないので、それからは気を付けていますが・・・。
 そんなルーちゃんと一緒に行くことで、まわりの人たちが私のことも盲導犬のことも、よく理解してくれるようになりました。困ったことがあっても、みんなで考えて、解決できてしまうんです。それが楽しいから、私は先にあれこれ悩まないで、とにかくやってみることにしています。
 
これからの目標
 コロナで延期とか中止になっているイベントが再開されたら、ルーちゃんと一緒に必ず行きたいですね。そして今新しくやりたいスポーツは、スキューバダイビングなんです。誘ってくれている友人と一緒に、サンゴ礁のきれいな沖縄や和歌山県串本の海に潜ってみたいです。私は弱視で光が見えるので、海の中の光を見てみたいんです。すごくきれいやろうなぁ..。!

~最後に、田川さんからメッセージ~
 「見えないから無理かも」とか「盲導犬がいるけど大丈夫かなぁ」と、心配したり躊躇してしまうことは誰にでもあると思うんです。もちろん、うまくいかなくて悩んだり凹むこともあります。だけどちゃんと道は見つかるもの。いろんな方との出会いの一つひとつにあったかいものを感じています。だから私は、「まずはやってみよう」って思うようにしています。そんな、やってみたからこそ得られる感動が一人でも多くの人に伝わったらいいなぁと思いますし、味わってほしいなって思っています。

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ボランティアパートナー 田中さん
 ブラインドゴルフのボランティアパートナーをされている、田中能文さんにもお話を伺いました。田川さんによると「田中さんは、すごくサポートがうまいです。独り言を言うような感じで、さりげなく風の向きとか、必要な情報を入れてくれるんですよ」とのこと。
田中さんは、当協会のテラスボランティアもしてくださっています。

ブラインドゴルフのパートナーを始めたきっかけ
 日本で開催されたブラインドゴルフ世界大会を見に行く機会があり、晴眼者と遜色ないプレーに驚いたのが最初です。その後、いくつもご縁があって、大阪視覚障害ゴルファーズ協会に入り、パートナーとしてお手伝いをしています。

パートナーの役割
 一番は、競技者の安全確保です。その上で、距離や風の読み、どのクラブを選ぶか、どれだけの強さで打つかなど、情報提供した後、決定するのは競技者です。もし失敗すれば、自分の情報提供が悪かったのでは・・・ と責任を感じますが、それを引きずらないのがゴルフのいいところだと思います。すぐに気持ちを切り替えて、敗因を分析し、次に繋げていきます。

パートナーの楽しさ
 ブラインドゴルフでパートナーをしている時は、自分でコースを回る時の1.5倍は考えますね。どう動けばよいのか、読みがどうだったのか、何度も考える中で、知らないうちに自分のゴルフの技量が上がっていることも多いです。そして、ゴルフの楽しさ、目標を達成したときの喜びを共感することが、パートナーの面白さだと思います。もしかしたら与えるより与えられるものの方が大きいかもしれません。
取材・文:Etsuko F

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