季刊誌「ハーネス通信」
2021年01月のバックナンバー
- 新春座談会(2021年新年号)
創立40周年を迎えた関西盲導犬協会。この節目の年の締めくくりは、職員による座談会です。集まったのは、ベテランや新人を交えての6人。が... なにせ小さな協会。"休憩中の雑談"に陥らぬよう、ベテランユーザーの清水和行さんに、座談会をピリッと引き締めるスパイス役を担っていただきました。残念ながら新型コロナ感染対策のためリモート参加となりましたが... スパイスの効き目は、いかに??
<清水和行さん プロフィール>
1989年27歳の時に、関西盲導犬協会で盲導犬ベリーとの共同訓練を受け、広島県で初めての盲導犬ユーザーとなった。以降、盲導犬ユーザーの全国ネットワークを立ち上げるなど、視覚障がい者と盲導犬の啓発活動に力を入れている。<職員>小芦英知(所長)、山口浩明(訓練部長)、仲宗根瞳(歩行指導員)、大西省子(木香テラス担当)、高橋美冬(訓練担当)、浅野美樹(渉外担当)
☆最初に職員一人ずつから
――仕事内容と関西盲導犬協会の第一印象を...
小芦:全体の統括として、がんばってます。協会の第一印象は、初めて事務所に挨拶に行ったときの、職員Kさんの冷たいまなざしが忘れられません(笑)山口:犬の訓練と共同訓練をまとめる役目をしています。初めて協会に行く時、亀岡駅からタクシーに乗ったのですが、どんどん山奥に連れていかれて、不安になりました。
仲宗根:候補犬の訓練と共同訓練を担当しています。最初に協会に来た時は、ボランティアとして滞在していたのですが、職員のみなさんが親切ですごくアットホームで。帰る時に離れがたくて泣いてました(笑)
大西:訓練犬とリタイア犬の幸せを考えています。協会の第一印象は、視覚障がい者とボランティアのつながりを感じる協会だと思いました。
髙橋:盲導犬訓練士の資格取得に向けてがんばっています。インスタグラムも担当しています。初めてボランティアとして来た日の昼休憩の時、一人でご飯を食べていたら、Fさんが来て横で一緒に食べてくれました。今思えば「やさしいな」ですが、その時はただ怖かったです(笑)
浅野:コロナ禍の中、あの手この手で協会が潤うようがんばっています。最初はAGBN(アジア・ガイドドッグ・ブリーディング・ネットワーク)のスタッフとして協会に関わるようになったのですが、当時所長のFさんのちょっとブラックなジョークには何度か絶句しました(笑)
☆次に清水さんに質問
――盲導犬と関西盲導犬協会の印象は?
清水:盲導犬はエリート的な存在で手が届かないというイメージでしたね。僕はチャリンコ、盲導犬はスーパーカー(?)みたいな。初めての共同訓練は、「広島県の盲導犬第一号」の取材でテレビ局撮影クルーがついてきて、かなりのプレッシャーでした。今の共同訓練は楽しすぎて大好きなんですけど(笑)――啓発活動とユーザーのネットワーク作りを進められましたね。
清水:まずは広島です。とにかく一頭目ですから行く先々で入店拒否、乗車拒否に遭い、その都度交渉していました。その後、全国のユーザーに呼び掛けて、全日本盲導犬使用者の会発足までつながりました。ネットがない時代、大変でしたが、若くて怖いもの知らずだったし、何でも面白くってね。入店拒否があると、「さあ、どうやって解決しましょうかね」とわくわくしてしまう。今も昔も基本はWINWINですよ。――関西盲導犬協会の良さは何だと思いますか?
清水:なんといってもアットホーム。どのスタッフも、ぼくのことを分かってくれている。そして犬が使いやすい。盲導犬がいいと、ユーザーも健康になれるんです。――ではウィークポイントは?
清水:もっと盲導犬の数を出してほしいです。僕たち盲導犬がいないと困るので、次の犬をすぐに用意してもらえるのかな? とかすごく気になるんですよ。さらにいろんなタイプがそろっている中から好みの犬を選べたら最高ですね。☆ここから自由な話し合い
――入店拒否でわくわく?
仲宗根:清水さん、入店拒否でわくわくするって、どういうことですか?
清水:基本的にどの店も、お客さんはウェルカム。それなのに断るのには理由があるはず。とにかく相手の思いを聞き、一緒に考える空気を作るんです。心配なのは畳? 他のお客さん? それが分かれば、解決方法を一緒に考えるんです。WINWINで楽しく解決します。
仲宗根:なるほど、WINWINの関係、お互いの気持ちをくむ、ですね。
清水:そう。共同訓練中に僕がひどい失敗をしたことがあって、山口さんに「失敗は今のうちにしといてください」と言われて楽になりました。これも相手の気持ちをくむ、WINWINだと思いますよ。――訓練犬の数を増やすには?
小芦:訓練できた犬がたくさんいて、希望者がすぐに共同訓練に入れるのは理想ですね。
山口:同感です。希望する人は、センターに連絡してくるだけで、すごい勇気がいると思うんですよね。それなのに何年も待たせたら、せっかくの思いが冷めてしまう。
浅野:訓練犬が盲導犬として合格する確率(成功率)を上げるのが一番。その方法の一つに、パピー教育があると思います。入店や交通機関の利用など、パピーの社会的な受け入れが進んでいる国もあるのに、日本は遅れているんですよ。まずは地元からじわじわとムーブメントを起こしていければ・・・。
髙橋:盲導犬候補の犬を増やすには、私が早く一人前の訓練士にならなくては、と思います。そしてさらに、後輩が入って育ってほしい。
清水:あと一番いいのは、盲導犬の希望者がもっと増えて職員がお尻を叩かれることだと思いますよ。――ユーザーさんからの「いいね」が大切!
山口:視覚障がい者の方への情報提供や啓発活動もしているのですが、やっぱりユーザーさんからの口コミの力は大きいですね。そのためには、満足してもらえるサービスを提供しなくては。
清水:それ大切! 「関西盲導犬協会っていいよね」というウワサですね。
大西:うちの協会の良さって、一頭の盲導犬に注がれているいろんな人の思いに向き合い、不器用ながらも真剣に考える姿勢だと思うんです。ユーザーさんに対しても同じで、信頼できる真摯な姿勢が満足なサービスにつながるのではないでしょうか。☆さいごに
小芦:一つ胸をはって自慢できるのは、職員一人一人が何事にも誠実に、丁寧に対応するところです。課題もいっぱいですが、関西盲導犬協会らしい良い伝統は維持しながら、来たる50周年に向けて、これからも地道にがんばっていきたいと思います。