読み上げブラウザ用メニュー

季刊誌「ハーネス通信」

2020年04月のバックナンバー

創立40周年を迎えて(2020年春号)

関西盲導犬協会は、おかげさまで40周年を迎えます。一つの節目を迎えるにあたり、今回、濵本捷子会長にいろいろとお話を伺いました。濵本会長は歴代会長初の女性であり、視覚障がい者であり、盲導犬ユーザー歴もあり... と、『初』尽くし。知られざる秘密の過去(?)も語っていただきました。


盲導犬のユーザーとして
Q1:濵本会長は、盲導犬のユーザーでしたね。
A:はい、二頭の盲導犬と共に17年間歩きました。白くて気品のある女の子のパーシャ、黒くてひょうきんな男の子のドゥーリーと、全くの正反対の二頭でしたが、どちらも素晴らしい盲導犬で、多くの人に可愛がっていただきました。
Q2:今、盲導犬を使っておられないのは、なぜですか?
A:足の手術をした影響で、速く歩けなくなったことが一番の理由です。さっさと歩けなければ犬が可哀そうです。もう一つは私の年齢です。盲導犬の貸与を受ければ、約8年間は犬の管理に責任を持たねばなりませんから。
Q3:よく決心されましたね
A:難しいことでしたが、私の場合、幸い家族の支えがあるので決心できたと思います。二頭が私の世界を広げてくれ、そのつながりのおかげで、今も不自由なく過ごしています。それに社会全体も、よい方向に変化しています。
Q4:そんなに社会が変わりましたか?
A:はい。盲導犬を持つ前は、事前に友だちなどに外出サポートのお願いをしておかねばなりませんでした。でも今は、切符を買う時に伝えれば、どの乗り換え駅でも駅員さんが待ち受けてサポートしてくれます。また盲導犬の扱いも、近ごろは盲導犬にではなく、ユーザーに対して「何かお手伝いしましょうか?」という自然な声かけが多くなりました。
関西盲導犬協会の会長として
Q5:会長に就任される前、戸惑いはありましたか?
A:ありましたよ。私には、とても務まらないと思いました。でも、「関西盲導犬協会の理念は『視覚障がい者の生活の質を高める』だから、元盲導犬ユーザーで、視覚障がい者の濵本さんがふさわしい」と推薦されました。確かに私が会長になれば、支援してくださる方々にユーザーとしての思いも込めて誠心誠意お礼を言うことができますよね。そう考えると、それが私の役割かもしれない、という気持ちが湧き、最終的に家族の理解も得られたので、お引き受けしました。
Q6:なるほど、「関西盲導犬協会らしい会長」ですね。
A:「先頭に立つ会長」ではなく、「たくさんの人に支えてもらう会長」というのが、きっと関西盲導犬協会らしいのでしょうね。
Q7:確かに、いつも上手に人に助けを借りて、自然に「ありがとう」っておっしゃいますね。
A:会長って、あちこち呼ばれて、人に会う機会も多いのです。でも私は見えないし、この性格だから、相手が誰かわからないまま、どんどんお手伝いをお願いしてしまって。元首相の奥様とか、外国の大使とか...。見える人は冷や汗でしょうね(笑)
Q8:皆さん、どんな反応をされますか?
A:きっと、もたもたする私を見るに見かねてお手伝いくださるのでしょうね。一緒に食事をしたり、点字を読みながらスピーチする私の姿をご覧になるうちに、『見えないとはどういうことなのか』を理解してくださるようになります。
Q9:それは大切なことですね。
A:盲導犬は目立つから、いつでもスターでしょう。けれどまずは、その横にいる『人』のことを知ってほしいし、理解してほしいんです。
子どもの頃は...
Q10:助けた人がうれしい気持ちになれる... それは濵本さんのお人柄ですね。子どもの頃からですか?
A:小さい頃は弱視だった私は、みんなに可愛がられる末っ子でした。田舎の育ちで、一日何度もお仏壇に合掌して感謝することを教えられていたことも、「ありがとう」が多い理由かも。
Q11:なるほど、そのまま大人になった... というわけですね。
A:いえいえ、そうでもないのです。だんだん視力が低下して、 つらいことが多く、落ち込んだ時期もありました。失った自信を取り戻したのは、内緒で保母(保育士)の試験を受けて合格したことがきっかけかもしれません。「私だって、出来るんだ!」って勇気が出ました。重症心身障がい児施設である第一びわこ学園に勤めていた時は、その保母資格が大いに役立ちました。
Q12:いろいろ経験されているのですね。
A:ええ、盲学校の点字図書館や、近所の病院に勤めたりしていました。また京都ライトハウスの鳥居寮に1年間入所し、生活訓練を受けたことも大きな経験となっています。
関西盲導犬協会との出会い
Q13:盲導犬の貸与を受けたいと思われたきっかけは?
A:関西盲導犬協会のユーザーさんの講演を聴き、初めて盲導犬にも触らせてもらって、すっかり魅了されました。
Q14:盲導犬のユーザーとなってみて、いかがでしたか?
A:なんといっても、颯爽と歩けることに感動しましたね。その頃、視力低下が進んで、家の中でさえもこわごわと歩いていましたから。この快感を、見えなくて気分が落ち込んでいる人にぜひ体験してもらいたいです。
関西盲導犬協会の未来は...
Q15:これからのAI時代、盲導犬は必要でしょうか?
A:必要であり続けると思います。機械ではなく生きているからこそ、助けられたことが何度もありました。辛い思いをしている時、そっとあごをひざに乗せて寄り添ってくれる、そのぬくもりと安心感。でも都合の良い時だけ利用することはできません。責任をもって管理することが私の自立心を育て、精神的にも肉体的にもプラスとなりました。だからどんなにAI技術が進んだとしても、必ず盲導犬を持ちたい人はいると思います。
Q16:会長として大切にしていることは何ですか?
A:今ある関西盲導犬協会の良さを守っていきたいですね。一つには、盲導犬の質の高さです。これは胸を張って自慢できます。それから、視覚障がい者の幸せを一番に思う、礼儀正しく思いやりのある職員たち。これも自慢です。とにかく、どんなことも私だけではできません。だからすべてのみなさまに対して、今までもこれからも、「感謝の心とありがとうの言葉」に尽きますね。
文/古橋悦子(フリーライター)
メニューを閉じる