季刊誌「ハーネス通信」
2020年02月のバックナンバー
- 盲導犬育成に欠かせない繁殖の取り組み ~凍結精子作成のための冷蔵室をご寄贈いただいて~(2020年新年号)
より良い盲導犬を育成するためには、まず盲導犬としての素質をもつ候補犬が必要です。そのためには繁殖計画やその技術が重要なものとなっています。繁殖計画を進める上で、新しい血統を入れていくことも必要ですが、近年、海外の盲導犬育成団体とは、繁殖犬や候補犬の輸送ではなく、凍結精子による人工授精が前提となっています。そこで、当協会も精度の高い凍結精子の作成と人工授精技術の確立に努めているところです。
特に、凍結精子を作成する上で、温度管理は重要なポイントです。冷蔵庫内とほぼ同じ温度のもとで大部分の作業を進めなければなりません。当協会では、低温に保った箱を手作りし、その中に腕だけを入れて作業するなど、試行錯誤を重ねてきました。このような状況の中、かねてより質の高い盲導犬育成のために不可欠な「繁殖の重要性」をご理解いただき当協会への援助を継続してくださっている京都橘ライオンズクラブ様はじめライオンズクラブ国際協会335-?地区3RIZの京都平安、京都北、京都洛北、京都洛央、各ライオンズクラブ様の合同アクティビティとして、昨年6月、凍結精子作成のための冷蔵室をご寄贈いただきました。室内の温度を一定した低温状態に設定できるので、職員は寒さに震えながら作業することになりますが、季節やその日の気温に左右されることなく安定的に良質な凍結精子を作成することができるようになりました。
さらに、このような設備的な条件が整ったことを受け、9月26日から30日までフィンランド盲導犬協会に当協会職員3名を研修のため派遣しました。フィンランド盲導犬協会は、海外の盲導犬育成団体の中で凍結精子の作成や交配に関して高い技術を持っています。フィンランドでの凍結精子作成の作業工程を見学し、新しい技術を学ぶこともできました。
今回フィンランドで得た知識とご寄贈いただいた冷蔵室を活用し、より適性をもつ盲導犬の育成のため、今後は繁殖の分野からさらに積極的にアプローチしていきたいと考えております。