季刊誌「ハーネス通信」
2019年11月のバックナンバー
- 香港の盲導犬育成団体を訪問して
7月8日~11日の4日間、当協会職員3名が、「ホンコン・ガイドドッグス・アソシエーション」と「ホンコン・シーイング・アイ・ドッグ・サービス」という二つの盲導犬育成団体を訪問する機会を得ました。
香港は、札幌市と同じくらいの大きさなのですが、まるで東京が国になったようなイメージです。人口密度が高く、高層マンションや、ビル群が所狭しと建ち並んでいました。
交通機関は、地下鉄や2階建てバスが多く利用されているそうですが、交通事情は日本に近いと感じました。歩道上にある障害物や人混みは、京都の繁華街と変わりありません。ただ、時々、工事現場の足場を支える竹が頭上を横切っていたりしますが。そういった街の中を盲導犬とスムーズに歩くユーザーさんの様子を見学させていただきました。
また、文化の違いから、レストランの床などには食べ物やゴミなどが落ちていることが多いのですが、そんな中でも、盲導犬はそれらを気にする様子もなく、すやすやと寝ていました。
盲導犬育成の面で日本と大きく違うことの一つは、パピーウォーカーが盲導犬候補のパピーを連れて地下鉄やバスに乗ったり、スーパーマーケット、大型ショッピングモールなどへ行くことができるということです。パピーの時期にさまざまなところに出かけることは、その後の盲導犬としての訓練に活かされる大切な経験になります。
また、パピーウォーキング中から、訓練は始まります。今回、その訓練にも同行しましたが、その中で特に印象的だったのは、「パピーウォーカーが与えるフード以外は食べない」ということを教える訓練です。
この訓練は、クリッカーという音が鳴る道具を使って行われます。初めはパピーが少しでもフードを食べず我慢できれば、クリッカーを鳴らし、訓練士やパピーウォーカーはパピーをほめてご褒美となるフードを与えます。やがてパピーは、「フードは決められた人の手からもらうもの」という学習をします。そして最終的には、いくら食べ残しやフードが床に落ちていても、それらを食べなくなるということでした。
パピーウォーキングを修了すると、その犬の適性をみて、セラピードッグとしての道に進む犬たちもいました。セラピードッグとなった犬たちは、医者や作業療法士、看護師といった専門家チームからのオーダーを受け活動します。香港に盲導犬育成団体が設立されてからまだ10年も経っていません。しかし、新しいからこそ多くのことにチャレンジしていて、日本が学ぶべきところも多くありました。そういった香港のよいところを積極的に取り入れていきたいものです。