季刊誌「ハーネス通信」
2019年11月のバックナンバー
- 今年の夏を振り返って(2019年秋号)
今年は梅雨が長く、夏が始まるのが遅かったように思います。しかし、梅雨が明けると、日本各地で35度以上の猛暑日が続きました。
当協会では、夏の暑さ対策として、例年通り、サマータイムを導入しました。訓練を担当している職員は、日が昇り気温が高くなる前に訓練を開始できるように、朝6時に出勤。また、炎天下での訓練を避け、京都市内の地下道やアーケード街といった場所で訓練をするようにしました。
出勤途中の人たちの行き交う地下の改札口や、開店前でシャッターの閉まったアーケード街など、普段はあまり出会うことのない人や街の様子の中での訓練です。
街頭募金活動も、大切な啓発活動の一環として取り組んでいますが、夏場ならではの工夫をしました。募金会場を地下街の一角にし、屋外の場合は、ソフトケージを置いて、PR犬は交代で休めるようにしました。また、小型扇風機やジェルマットを置き、こまめな水分補給を心掛けました。ところで、盲導犬ユーザーは、暑い時期の外出をどうされていたのでしょう。室内でも熱中症になるほどの異常な暑さでは、多くの方と同じように、盲導犬ユーザーも不必要な日中の外出は避けていました。
ただ、日々の生活の中で、時間の都合をつけることができる外出ばかりとは限りません。例えば、通勤や通院。勤務時間の都合や、病院での診察に時間がかかってしまったりして、帰宅するのが昼過ぎになってしまった、ということもあります。その上、炎天下の移動を避けるためにタクシーを利用しようとしたら乗車拒否に遭った、という悔しい経験をもつ方もいました・・・。
やむなく日中に外出する場合は、こまめに水分補給を行う、できるだけ歩く距離や時間が短くなるルートや日の当たらないルートを選択する、短い距離でも交通機関を利用する、熱くなったアスファルトの地面で足の裏をやけどしないよう犬用の靴を履かせる、熱を遮断する生地で作ったコートを着せるなど、ユーザーもそのパートナーである盲導犬の負担軽減に努めました。
このように、外出にあたってのさまざまな事情があることや実際の外出の状況、またユーザー自身が盲導犬へのケアを行っていることなど、周囲の方には知っていただき、ユーザーが安全にそして安心して行きたいところに行くことができるようご理解とご協力をお願いしたいと思います。夏のコート着用について
「暑いのに犬にコートを着せていて大丈夫?」そう心配して、訓練中や街頭募金活動の際に声をかけてくださる方もいます。そこで、夏場のコート着用によって犬の表面温度にどれぐらいの差があるのか調べてみました。
晴れた日の午前中もしくは夕方、12頭の犬たちの歩き出す前と歩いた後の2回、頭・コートの表面・コートの下の被毛表面の3カ所の表面温度を調べてみました。盲導犬と通勤しているユーザーさんの多くが外を歩いている時間は、だいたい長くても20分程度であることから、外を歩く時間は20分としました。
歩き出す前と歩いた後で、どれぐらい表面温度が上昇したのか、その平均値をみると、
何も被っていない頭部に比べるとコートで覆われた部分の方が表面温度の上昇値が低いという結果になりました。
頭部 ・・・・・・ 3.9°
コートの表面 ・・ 2.7°
コートの下 ・・・ 2.3°
犬にコートを着せることでコートの中に熱がこもる心配はなく、人間の着る衣服と同様、コートには直射日光を遮る効果があるようです。