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季刊誌「ハーネス通信」

2013年12月のバックナンバー

京都造形芸術大学「リアルワークプロジェクト」盲導犬PRプロジェクトのご紹介

 京都市左京区にある京都造形芸術大学は、「京都文藝復興」を基本理念とし、美術、デザイン、映画、舞台など様々な立場から芸術を学ぶことができる大学です。実社会を学びの場とする「リアルワークプロジェクト」は、学生の実践的なキャリア教育の場として専門部署を設置し展開しています。
 昨年春に「盲導犬PRプロジェクト」が発足しました。そして、17名の学生を中心に企画から開催まで約半年をかけたイベントが、昨年10月13日に開催されました。
 このような取り組みは当協会としても初めてのことです。そこで開始から開催までの様子を振り返りながらご紹介したいと思います。

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4月 プロジェクトの開始
身体障害者補助犬法が全面施行されて10年が経ったものの、盲導犬ユーザーが利用拒否に遭うことがまだまだ少なくない現状に対して、デザインやアートといった視点からこれまでにない啓発活動ができないだろうか、そんな思いから「盲導犬PRプロジェクト」の一歩が始まりました。
 「私たち一般市民の盲導犬やそのユーザーに対する意識を変え、積極的な支援につなげるためのアート&デザインを活かしたイベント」の実行に向けて、学生に対する募集説明会が行われました。
 プロジェクトに応募した学生のうちの有志は4月29日に開催された当協会オープンデーに参加、盲導犬事業について知ってもらいました。

5月 キックオフミーティング
 美術工芸・歴史遺産・舞台芸術・プロダクトデザインなどなど、様々な学科で学ぶ17名のメンバーが集まり、またティーチング・アシスタントとして2名の学生、3名の教職員の方々、計22名でキックオフミーティングが行われました。
 以後、毎週金曜日に定例ミーティングが行われ、盲導犬や視覚障がい者支援の現状を学ぶリサーチ活動に取り組んでいきました。

6月 第1回プレゼンテーション
 7つのグループに分かれて考え出された企画が発表されました。
 ・視覚障がい者も晴眼者も盲導犬ユーザーも楽しめるような京都の観光ガイドブックの作成
 ・いつ聞いても盲導犬とそのユーザーさんに関する情報が提供されている24時間ラジオの開設
 ・盲導犬に関する知識や利用環境を競技を通して理解する運動会の開催
 ・ゲリラ的に盲導犬ユーザーと電車車両に乗り込む電車ジャック
など、中には実現が難しくもユニークな企画もありましたが、どういう内容の啓発が誰に対して必要なのか、短期間の中でよく考えられていることが伝わってくる内容でした。

7月 訓練センターでのプレゼンテーション
 前回のプレゼンテーションから3つの企画にしぼられました。協会職員に対して企画の提案が行われ、それに対して、職員から質問・意見が出されました。
 そして、京都市内に会場を探し、Ctown(シータウン)という街を創る取り組みが始動しました。

8月~10月
8月にプレイベントとして実際に盲導犬ユーザーさんと学生2名で「東山フェスタ」というイベントに参加しました。京都の音を聞いて歩き、その音をコラージュする内容のイベントです。イベントが終わった後も、食事を共にしたり、半日を盲導犬ユーザーさんと共に過ごしたことで、言葉だけでは得られない深い体験になり、Ctownをつくる上でも大事な要素となったそうです。

Ctownについては期末試験、夏休みをはさみながらも、ミーティングが重ねられ、会場も京都駅南側にあるイオンモールKYOTOに決まりました。
 Ctownは、Communication(交流)、Contact(ふれ合い)、Challenge(新しい挑戦)mCo-create(共につくる)の4つのCがコンセプトになっていて、それを中心により楽しく学べる内容が練り上げられていきました。その結果、参加者がコマとなって巨大すごろくを進みながら、盲導犬やそのユーザーについて学べるような内容のものに決定しました。
 そして会場の大きさに合わせた巨大すごろく、学生が考案したキャラクターでイベントの案内役である盲導犬候補犬の「テンダー」の衣装などの制作が始まりました。授業が終わって放課後からの制作になるので、遅くまで大学に居残る日もあったそうです。

10月13日(当日)
 トラックで巨大すごろくに使用する約90枚のベニヤ板が運ばれ、イオンモールのkaede広場にCtownが出来上がりました。
 参加者は入口で「博士」への手紙を預かりスタート。大きな手作りのさいころを振って、出た目の数だけ前に進むのは、いつものすごろくと一緒。でも途中でいくつかのクイズに挑戦します。クイズは参加者の年齢にあわせて3段階のレベルに分けられています。
 例えばレベル1の問題では、次のような4択問題が出されています。
「盲導犬に出会ったときは、
 1 見守ってあげる
 2 おかしをあげる
 3 なでてあげる
 4 声をかける」
 またどのレベルでも必ず出る問題が
「ユーザーさんが盲導犬といっしょに入れない場所はどこ?
 1 ホテル
 2 レストラン
 3 病院
 4 どこでも入れる」
 参加者はこのような問題を解きながら進みます。分からないときは、テンダーくんや、時には会場に詰めてくださっていた盲導犬ユーザーさんが登場してヒントを出します。
 そしてゴール。博士の部屋にたどり着き手紙を渡すと、「あなたを盲導犬PRメンバーとして認定いたします」という認定証がもらえます。また、帰り口には、机の上に大きな模造紙があり、参加した子ども達が自由に感想を書けるようになっていました。

11月 イベントが終わって
 参加した学生スタッフからも様々な感想をいただきました。ほんの一部ですが、ご紹介します。
「Ctownでキャストをやっていくなかで、はじめは何のイベントかも知らないで参加した子や親御さんたちが、すごろくをしていく中でどんどん意欲的に質問してくださったり、盲導犬だけでなくユーザーさんにも関心を示してくださったことに、やりがいや嬉しさを感じました。」(1回生 K.Sさん)
「イベントを通して、盲導犬や目の見えにくい方についての知識と接し方を多くの人に知っていただけてとても良かったです。受付を担当していて子ども達が興味津々な様子で順番を待っている姿が嬉しく、帰ってきてからの「ありがとう!」「楽しかった!」という言葉と笑顔から、楽しんで学んでもらえたのだと感じられました。」(2回生 F.Hさん)
「私はキャスト役だったので参加してくれていた親子連れの方と直接話をする機会が多かったのですが、「ユーザーさんが盲導犬と一緒に入ってはいけない場所はどこでしょう?」という問題でとても印象的なことがあります。「レストラン」と答えた男の子が、正解はどこでも入れるんだよ、と言ってもあまり納得してない様子でした。その時ちょうどユーザーさんが近くに来てくださったので、盲導犬へのブラッシングや服について話してもらい、飲食店へ入るための配慮として、きれいにしているんだよ、というエピソードを話していただきました。その話を聞いて、男の子はうなずいていました。それほどきれいにしているから入っても大丈夫。と納得できたからかな?と思います」(3回生 K.Yさん)

 11月3日に当協会で行われたボランティアズデーでは、イベントの報告がありました。また、現在、卓上すごろくも考案中とか。さらに進化する盲導犬PRプロジェクトにご期待ください。

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