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季刊誌「ハーネス通信」

2024年04月のバックナンバー

ボランティアリレーエッセイ(3) バトンを受け取って(2024年春号)

hpyou.jpg 「こちらがハノンちゃんです」  8年間にわたる盲導犬生活を引退したハノンをお預かりするべく、木香テラスにて一通りの説明を聞き終えた後で連れてこられたのは、それまで私のすぐ後ろでじっと静かに座っていた子でした。


 「私の出番!」とばかりにシッポを目一杯振って甘えてくる、手入れの行き届いたツヤツヤ毛並みのハノンとの出会いは、実は10年前に遡ります。当時お預かりしていた繁殖犬ジェニアが妊娠後期に体調を崩し、命の危険と隣り合わせで5頭の子犬を出産しました。ハノンはそのうちのひとりです。私たち家族は母犬の治療に専念し、生まれたばかりの子犬たちは一晩だけ我が家で過ごした後、ボランティアさん方の多大なご尽力により、立派に育てていただきました。5頭ともそれぞれの10年を無事に過ごし、昨秋のボランティアズデーにて再会できたことは大きな喜びでした。

 ハノンとの初めての散歩は衝撃でした。道のニオイなど全く嗅がず、まっすぐ前を見て、人に付いてちゃっちゃっとリズムよく歩く(しかも早い!)姿に「これぞ盲導犬!」と感動しました。今では普通に道端のニオイを嗅ぎながら歩き、時にはストライキもします。行き先はハノン任せでゆっくり歩くので、家からどんどん離れて1時間以上さまようこともあります(笑)。

 ハノンとの暮らしが始まって現時点(2月末)で4か月になろうとしています。家人が出かけると玄関でしょぼんと佇み、帰ってくると大はしゃぎでまとわりつく。ごはんが大好きで食器を持つとピョンピョン跳びはねて催促する。気がつけばそっと寄り添って寝息を立てている。そんなハノンが愛おしくてたまりません。10年の時を経て再び巡り会えたご縁は、この子と縁を結んでくださった多くの方のお気持ちに思いを馳せるとまさしく「リレーバトンを受け取る」ようで身が引き締まる思いです。これからも楽しく、ゆったりと時を紡いでいければと思います。

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