季刊誌「ハーネス通信」
2013年01月のバックナンバー
- 海外の盲導犬事情台湾編(2013年新年号)
今回は、AGBN(アジア・ガイドドックス・ブリーディング・ネットワーク)の会議が行われた台湾から、盲導犬事情についてご報告させていただきます。
台湾は親日国と言われますが、町を見渡すと、日本で見かけるお店が本当に多く見られます。テレビをつけても日本の番組専門チャンネルが流れていましたし、バスのラッピング広告には、イチローがいたり、その後ろには日本でも有名なモデルさん...... 遠く離れた異国の地でも日本のスターに出会えるとなんだか嬉しいですね。
そんな台湾の道路事情についてですが、何といっても原付バイクの多さに驚かされます。
信号が変わると同時に一斉に何十台というバイクが走り出します。また、街を歩く多くの人が日本のものよりはるかに分厚いマスクをつけています。排気ガスの量もすごいのです。台湾の盲導犬ユーザーは、こんな過酷な道路の中を歩かなければならないのかといきなり驚かされました。
台湾には、現在3つの協会が有ります。最も古いものは、創立21年の歴史を持つ重建院盲導犬協会、そして今回のAGBN会議のホストでもあり、今年10周年を迎える盲導犬の頭数が最も多い台湾盲導犬協会、そして、ピントン大学内の補助犬協会にある盲導犬の施設です。
現在台湾には、約5万人の視覚障がい者が確認されており、そのうち盲導犬のユーザーは約50人だそうです。視覚障害者の千分の1の方がユーザーということになります。
台湾の盲導犬協会の方は、今後の課題として、盲導犬の頭数を増やし、質の向上を目指すと同時に視覚障害者への教育やサービスの向上を目指していきたいとおっしゃっていました。
実際に日本で留学経験のあるユーザーさんに伺ったところ、日本の道路は、点字ブロックが大きく、音がなる信号機も多いのでとても歩きやすかったとほめていただきました。
ここまで聞くと、なんだか日本の町の方が視覚障がい者にとってやさしいの?と思いがちですが、台湾の素晴らしいところは、補助犬ユーザーのアクセス権を保障した法律の内容が、日本よりずっと厳しいものになっているところです。
日本では、例えば盲導犬ユーザーの入店を拒否したお店に対して、何のペナルティもありませんが、台湾では罰則が有ります。拒否したお店に対して罰金が科せられるのです。
他にも台湾には、優れた点があります。日本の厚生労働省が作成した啓発ステッカーは、犬の顔のイラストがあり、その下に「法律により盲導犬・介助犬・聴導犬は同伴できます。」と書いてあります。しかし、台湾のものは、日本のものとよく似ていますが、仔犬も一緒に座っているのが特徴となっています。台湾では、盲導犬のみならず、訓練犬はもちろんパピーやパピーウオーカーも受け入れられているのです。実際、町でバスに乗る時にこのシールが貼ってありました。
台湾の内政部からの証明が、盲導犬ユーザー、盲導犬、訓練士、訓練犬、パピーウオーカー、パピーに与えられており、公的な威力を発揮しています。従って、台湾では、パピーの時から、電車やバスに乗り、エスカレーターも経験している犬が多いのです。日本の補助犬法も、さらに一歩踏み込んだ内容に改正していくことが必要なのではないでしょうか。
そうすることによって、国民全体に盲導犬のことを理解してもらえるきっかけにもつながると思いますし、いざというときに法の後ろ盾があると、補助犬ユーザーの不安が解消され、行動範囲も格段に広がるのではと、今回の視察で強く感じました。