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季刊誌「ハーネス通信」

2018年01月のバックナンバー

盲導犬ユーザーと京を歩く第19回~フルーティーな香りにうっとり 月桂冠大倉記念館~

PC200118.JPG まるで時代劇映画のロケ村? 風情のある街並みの中にあるお酒の博物館、月桂冠大倉記念館に行きました。春や秋の観光シーズンには、一日1000人以上が訪れる日もあるという人気のスポットです。ピンクのワンピース姿のウーリーと森永さんを迎えて下さったのは西岡さん。わかりやすくテンポよいご説明を聞きながら、創業380年という酒どころの世界に惹きこまれました。


伏見は、伏水だった
 1909年(明治42年)建造の酒蔵を改装したという記念館。中には京都市有形民俗文化財の指定を受けた酒造用具類がずらりと並びます。酒造りで杜氏(とうじ)たちが唄った「酒造り唄」が流れる館内は、太い梁が行き交う天井が高く、とても趣があります。中庭へ出ると、こんこんと水がわき出る井戸。おちょこにとって一口含むと、硬度が60度程度という水のまろやかさを、はっきり味わうことができました。潤沢な地下水が豊富な伏見は、「伏水」とも呼ばれていたとのこと。納得です。
大吟醸の秘密
 次に見せていただいたのは、酒香房と呼ばれる内蔵(うちぐら)。ここでは昔ながらの規模で行っている酒造りが見学できます。ご説明の中で印象深いのは、「吟醸酒」の意味。なんとなく「上等なお酒なのかな?」くらいに思っていましたが、実は「表面の4割以上をそぎ落としたお米を原材料としているお酒が吟醸酒」だと酒税法で定められているそうです。私たちが食べている白米は8パーセントしか削られていないのですから、ずいぶん贅沢です。さらに「大吟醸」というのは、半分以上を磨き削ったお米から作るお酒で、お米を磨くほどに、お酒はフルーティーに仕上がるのだそうです。
(ここで、ちょっとしつもん!)
Q:お米をそんなに削ってしまって、もったいなくないですか?
A:いえいえ。削ったお米は、家畜のえさから餅菓子の原料まで、すべて無駄なく利用されています。
Q:たくさん削った方が、美味しいお酒ができるってことなんですね。
A:お米の表面を磨くほど、フルーティーで高価なお酒になるのは間違いないのですが、美味しいかどうかは好みによります。ちなみに私は、「燗酒(かんざけ)」が大好きなのですが、熱燗にするには、香りよりも、普通の日本酒のように複雑な味わいがある方が美味しいと感じます。
Q:蒸したてのお米は、美味しいでしょうね。
A:いえ、お米の外側の栄養分を削っていますから、実は食べてもそんなにおいしくないのですよ。
働け! こうじさん! こうぼさん!
 お米のでんぷんを、ブドウ糖に変えるのが、「麹(こうじ)」の力。そしてブドウ糖をお酒に変えるのが、「酵母」の働き。麹菌と酵母菌という二種類の微生物の力で、お酒が作られているのです。しかも、麹菌は湿度が高く暖かい環境で甘やかせ、逆に酵母菌は寒くて厳しい環境に耐えさせた方が、よいお酒を造るのだとか。引き継がれてきた伝統のさじ加減こそが、美味しい酒造りの不思議な技なのですね。
いったいどんな香料が?
 目の前の大樽で作られている大吟醸酒は、発酵をはじめて13日目。今まさに発酵中の醪(もろみ)の香りを嗅がせていただきました。ヨーグルトのようにふつふつと湧き立つとろりとした液体から、ふんわり甘い香りがたち昇ります。外国人観光客から、「いい香りだ。いったいどんな香料を入れているのか」と問われることもあるとか。もちろん、香料など使いません。100パーセントお米と水だけなのです。
すごいアイデアから有名に
 徳川三代将軍家光の時代、1637年に創業し、今は14代目の社長が継ぐという月桂冠。全国的に有名になったきっかけの一つが、明治43年の「コップ付き小びん」。この発明が話題になり、一気に全国300以上の駅の売店で売られるようになったそうです。昨年も日本で最も有名なコンテストのひとつ、「全国新酒鑑評会」で金賞を受賞しているという、品質重視の酒造りをたっぷりと堪能しました。
森永さん、いかがでしたか?
「私はお酒が飲めないので、「きき酒処」の利き酒はできなかったのですが、でも、「コップ付き小びん」のレトロボトルを触らせてもらって、「なるほど!」と感動しました。今回の見学は、香りで酔っぱらわないかと心配していましたが、醪(もろみ)はすごくいい香りで、思わず売店で「酒まんじゅう」を購入してしまいました!お酒が好きな人はもちろん、飲めない人でも楽しめますよ。ぜひ行ってみて下さい。」
月桂冠大倉記念館  〒612-8660 京都市伏見区南浜町247番地
TEL 075-623-2056 FAX 075-612-7571
団体 (15名以上)の見学は要予約。 大人=300円、中学・高校生=100円 おみやげ付き
※視覚障がい者、盲導犬同伴の場合は、事前にご予約下さい。より分かりやすくご説明して下さいます。観光シーズン等、場合によっては対応が難しいことがあります。詳しくはお電話でご相談下さい。
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