実はこの「盲導犬ユーザーと京都を歩くシリーズ」スタート当初から、「美味しいものを食べる企画を!」と主張しつづけていた森永さん。今回、ようやく念願がかない、左京区哲学の道のお茶室を訪ねました。
南北に流れる琵琶湖疏水に沿って、銀閣寺界隈から続く哲学の道。その南のつきあたり、若王子神社の手前の小橋を渡ると、叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)「京都茶室棟」があります。ここに、テーブル席で靴のまま、本格的な茶道のお点前を味わえるお茶席があります。
心を清め、心を鎮める
暖簾をくぐると、迎えてくださった藤田ちひろさんの、やわらかな山吹色の和服と笑顔の明るさに、気持ちが華やぎます。通された和室は、広々としたバリアフリーで、床は石張り、開けた障子からは、日本庭園がまるで日本画のよう。さっそく持参した毛布を敷いてもらい、ウーリーは一休みです。
「お点前は、お道具を清め、心を清めることからはじまります」という藤田さんのご説明のとおり、おもてなしの心に満ちた動作が、心を鎮めてくれます。
え? これが わらびもち?
お待ちかねのお菓子は、「わらびもち」。でも、なんだか「もちまんじゅう?」 ちょっと不安げな森永さんのために、食べやすく四等分にしてくださいました。茶道においては、あくまでもお茶がメイン。お菓子はその前の準備のようなもの。一口味わった森永さん、「ほんとに わらびもちだ、やわらかくておいしい!」と、笑みがこぼれます。
すべての動作に意味が
一つ一つの動作の意味を丁寧に解説していただきながら、お点前がはじまり、心を込めた一杯が入りました。有名な『お茶碗をゆっくりと2回まわす』という動作には、『正面から口をつけないように』という意味が。さいごの「すすっ」というすりきりの音には、『飲みきりました。ありがとう』の感謝の意味が。どれも声を出さずに伝え合う、お互いの心の交流なのですね。
藤田さんに質問しました。
Q:椅子に座っての茶道というのは、珍しいですね。
A:立礼式(りゅうれい)式といって、明治時代からある正式なお作法です。外国から来られた方をはじめ、多くの人に味わい、親しんでもらえるよう工夫されています。
Q:疏水の桜が咲いたら、すごい人でしょうね。
A:そうなんです。季節による差が大きくて、春や秋はお客様がとても多く、お点前のおもてなしはお休みしています。人の少ない寒い時期、暑い時期であれば、ゆっくりとお点前いたします。四季を感じることもお茶事の良さですから、どの季節にもお越しいただきたいです。
Q:視覚障がい者の人は、よく来られますか?
A:いいえ、私は初めてです。疏水沿いが歩きにくいからかもしれません。でも、このお店の中はバリアフリーですし、どうぞお気軽にいらしてください。
Q:お点前の手の動きが、本当にやわらかいですね。
A:『重いものは軽く。軽いものは重く。』が基本です。同じように、丁寧に扱うことが、美しい動作になると言われています。
森永さんのご感想
「なんとなく堅苦しく思っていましたが、『こうしなくてはだめ』ではなく、『この動作には、こんな意味があります』と教えていただき、とても楽になりました。つまり、心と心、なんですね。教え方も分かりやすく、あたたかい気持ちになりました。そして、香りのよいお抹茶が、とても味わい深くて美味しかったです。ぜひ皆さんもどうぞ!」
叶匠壽庵 京都茶室棟 http://www.kanou.com/shop/chashitsu
住所 〒606-8444 京都府京都市左京区若王子2丁目1番地
営業時間 10:00~17:00
電話番号 075-751-1077
定休日 水曜日(※季節により変わります)
お店からのメッセージ 『盲導犬のユーザーの方も大歓迎です。ぜひ花見シーズン、紅葉シーズン以外の時にお越しください。事前にご予約いただければ、丁寧に対応いたします。』