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活動予定・報告

活動報告

2016年10月17日
協会日記143 盲導犬の歩行指導2(10/17)

日本盲人社会福祉施設協議会による盲導犬訓練基準では、歩行指導の実技は、1回を2時間程度、新規の訓練生は訓練日数20日以上(訓練回数40回以上)、代替者は訓練日数10日以上(訓練回数20回以上)行うことになっています。

新規の方の訓練日数20日以上というのは、午前と午後に訓練するとして週5日で4週間以上ということになります。また、代替者は2週間以上ということになります。

先日、盲導犬を貸与したAさんは、代替者ですので、最低でも2週間以上の訓練が必要ということになります。しかし、Aさんの場合は、年齢などを考慮してゆっくりと、かつ十分な訓練時間を確保するために、3週間のカリキュラムを組むことにしました。

盲導犬による歩行指導の特徴というか、難しいところは、時間をかけてゆっくり行うことが、逆に良い結果をもたらさないということがよくあります。指導員がいつまでも関わっていると、訓練犬とAさんとの信頼関係がいつまでたっても深まらないからです。

つまり、歩行指導に入るまでは、訓練犬は指導員や訓練士などの協会職員との信頼関係をもち過ごしてきています。しかし、ある日、訓練犬にとっては本当にいきなりだと思いますが、歩行指導が始った日から見知らぬAさんと過ごす、歩くことになり、指導員は近くにいるけど、あまり相手をしてくれなくなる。さすがに環境変化に比較的柔軟な犬種であるラブラドールやゴールデンでも、この状況はとても困惑するわけです。

歩行指導が進んで、Aさんと訓練犬との密着度が高まれば、ある程度、訓練犬は精神的に安定しますが、しかし1年間以上一緒にいた指導員や職員の影響力は絶大なもので、何かあれば訓練犬の意識は、Aさんよりも指導員に向いてしまします。

ですから、訓練期間が長くなり、いつまでも指導員がうろうろとAさんの周りにいると、訓練犬は指導員の動向をいつも気にかけ、Aさんとの信頼関係が十分に築けなくなります。結果として、Aさんと訓練犬のペアがうまく歩くことができなかったり、生活できなくなったりします。

新規の方が4週間というのは、犬と接することが初めての方でも、何とか信頼関係を築ける時間だと思います。代替の方は、犬との接し方がわかっているので信頼関係を新規の方より短い時間で築くことができます。4週間、2週間という訓練期間の設定は、ただ単に訓練の科目を習得する時間だけでなく、目の見えない訓練生が犬との信頼関係を構築する重要な時間なのです。そして指導員の影響力を徐々になくしていくために必要な時間です。

歩行指導しながら指導員の影響力を徐々になくしてくさじ加減が、盲導犬の歩行指導の特徴であり、とくに難しいところでもあると思います。

写真はAさんと訓練犬です。

DSC_0724.JPG

ちょっと文章が長すぎました。

つづく。

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